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第15章 第六話　【対岸の恋人】　　弐

　だが、川原にはお絹たちの他にも大勢の物見高い野次馬がひとめ増水した川を見ようと押し掛けていた。
　まるで別人のような貌を見せている川に、お絹は息を呑んだ。昨日着いたばかりのときは、あれほど穏やかであった川が一夜にして見事なまでに変貌を遂げていた。それは慎ましやかな女性が突如として牙を剥く魔女に変身したような感があった。あれほど澄んで輝いていた水は、泥に濁り切り、所々渦を巻きながら怖ろしいほどの速さで流れている。なるほど、喜作の話ではないけれど、この川に落ちたなら、子どもでなくとも大人でも助かりはしないだろう。