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凍える月~吉之助の恋~
第15章 第六話 【対岸の恋人】  弐
 川原にたむろしている野次馬たちの中には、見覚えのあるものも多かった。むろん、泊やの二階で相部屋になった連中である。むしろ、近隣の住人はかえって増水した川をわざわざ見にきたりする愚かな真似はすまい。
ここに棲む土地の者ならば、誰よりも増水した川の怖ろしさは知っているからだ。
 対岸に数人の人影が見えた。遠目でしかとは判じ得ないが、増水した川に氾濫の危険がないかどうか、見回りに来た男たちに相違ない。
お絹の視線がふと、止まった。数歩離れた先に佇む女のか細い後ろ姿を食い入るように見つめる。
 喜作が訝しむような視線をお絹に向けてよこす。お絹は喜作に近寄ると、耳元に囁いた。
「昨夜、泊やで一緒だった方なんですけど、どうにも様子が妙で、気になりましてね」
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