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凍える月~吉之助の恋~
第15章 第六話 【対岸の恋人】 弐
簪は女にとって、よほど大切な品に相違なく、あたかも魅入られたように簪を眺める女のまなざしには尋常ならざる光を宿していた。しかし、突然の嵐に怯え惑う他の人々には、女一人に気を払うゆとりは全く無いようであった。
「確かに、わしも少しばかり妙だと思ったな。この川は見た目よりも流れが速い。そのせいか、たまに世をはかなんだ不心得者どもが身投げの場所として選ぶこともあってな。大方は、恋に破れて、そんなことを考えて来た輩ではないかと思うていたのだが」
喜作が小声で応えた。
まさに、その刹那。
川原にいた人々の間にどよめきが湧き起こった。
「確かに、わしも少しばかり妙だと思ったな。この川は見た目よりも流れが速い。そのせいか、たまに世をはかなんだ不心得者どもが身投げの場所として選ぶこともあってな。大方は、恋に破れて、そんなことを考えて来た輩ではないかと思うていたのだが」
喜作が小声で応えた。
まさに、その刹那。
川原にいた人々の間にどよめきが湧き起こった。