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凍える月~吉之助の恋~
第15章 第六話 【対岸の恋人】 弐
お絹はその声に弾かれるように顔を上げた。野次馬たちが川の方を指して、興奮気味にしきりに何か叫んでいる。
「戻ってこい」
「死ぬぞ」
男たちが口々に叫び、女たちの中にはすすり泣く者さえいた。
泥で濁った川の中央に、一人の女がいた。女は激流に流されようとしながら、わずかながらも前に進んでいる。どうやら、必死に手足を駆使して、この増水した流れの速い川を
泳ぎ切ろうとしてらしい。
「あの女(ひと)だわ」
お絹が思わず呟くと、喜作が唸り声を上げた。
「飛び込んだんだ」
「戻ってこい」
「死ぬぞ」
男たちが口々に叫び、女たちの中にはすすり泣く者さえいた。
泥で濁った川の中央に、一人の女がいた。女は激流に流されようとしながら、わずかながらも前に進んでいる。どうやら、必死に手足を駆使して、この増水した流れの速い川を
泳ぎ切ろうとしてらしい。
「あの女(ひと)だわ」
お絹が思わず呟くと、喜作が唸り声を上げた。
「飛び込んだんだ」