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凍える月~吉之助の恋~
第3章 第一話 【凍える月~吉之助の恋~】 三
三
一方、その頃、伊八は突如として行方知れずになったお絹を探して走り回っていた。お絹が姿を消したのは半月ほど前の寒い夜だった。
その日最後にお絹を見たのは馴染み客の松二と禄助という二人連れだが、二人にいくら訊ねてみても、詳しいことは知らないようだった。
お絹の引く屋台が道端に放り出されたままになっていたのもおかしな話だ。父から譲り受けた商売道具として何より大事にしていたのに、それを路傍に放り出すとは、よほどの変事がお絹の身に起きたに相違なかった。
伊八は考えていると不安に叫び出しそうになり、とにかく江戸中手を尽くしてお絹の行方を追った。が、どれほど探しても、その居場所はおろか、一体何が起こったのかさえ掴めず、まるで神隠しにあったように、お絹はいなくなってしまった。
一方、その頃、伊八は突如として行方知れずになったお絹を探して走り回っていた。お絹が姿を消したのは半月ほど前の寒い夜だった。
その日最後にお絹を見たのは馴染み客の松二と禄助という二人連れだが、二人にいくら訊ねてみても、詳しいことは知らないようだった。
お絹の引く屋台が道端に放り出されたままになっていたのもおかしな話だ。父から譲り受けた商売道具として何より大事にしていたのに、それを路傍に放り出すとは、よほどの変事がお絹の身に起きたに相違なかった。
伊八は考えていると不安に叫び出しそうになり、とにかく江戸中手を尽くしてお絹の行方を追った。が、どれほど探しても、その居場所はおろか、一体何が起こったのかさえ掴めず、まるで神隠しにあったように、お絹はいなくなってしまった。