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凍える月~吉之助の恋~
第16章 第七話 【辻堂】 一
お彩はできるだけ何げない風を装った。お彩は飾り職人である父伊八と夜泣き蕎麦屋を営む母お絹と三人で江戸の町外れ、甚平店に暮らしている。父は江戸でかつて名人と謳われた喜作の技を受け継ぐ唯一の弟子であり、喜作が老齢のため現役を退いた現在、めきめきと名をあげつつある職人であった。
お彩はまもなく五つを迎えるが、口も達者で、幼いながらも母の手伝いを甲斐甲斐しくするおしゃまな少女だ。母お絹は二十二歳になるけれど、到底四歳の子どもがいるようには見えず、その可憐で儚げな外見はせいぜいが二十歳前にしか思えない。小柄でほっそりとした頼りなげな風情はあたかも風に倒れそうな花のようだが、実のところ、この母ほど外見と中身が一致しない人もいないだろうと、幼いお彩ですらほとほと感心するやら呆れるやらだ。
お彩はまもなく五つを迎えるが、口も達者で、幼いながらも母の手伝いを甲斐甲斐しくするおしゃまな少女だ。母お絹は二十二歳になるけれど、到底四歳の子どもがいるようには見えず、その可憐で儚げな外見はせいぜいが二十歳前にしか思えない。小柄でほっそりとした頼りなげな風情はあたかも風に倒れそうな花のようだが、実のところ、この母ほど外見と中身が一致しない人もいないだろうと、幼いお彩ですらほとほと感心するやら呆れるやらだ。