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凍える月~吉之助の恋~
第16章 第七話 【辻堂】  一
 それでも、お彩は次第にお絹に遅れ、途中からはお絹に手を引かれて歩いた。
「大丈夫かえ?」
 お絹は数歩あるいては立ち止まり、娘を気遣う様子を見せた。お彩が小さく頷くと、お絹は再び歩き出す。そういったことの繰り返しで、漸く目的地に辿り着いた時分には、お彩はもう話すことさえ億劫なほど疲れ果てていた。折しも夕陽が黄昏の空を赤く染め上げて、辺り一面を茜色の光で包み込んでいた。
「ごらん、お前に私が見せたいと言ったものは、これだよ」
 疲れ切ったお彩の思考が母の短いひと言にいざなわれるようにして突如として、現実に立ち返った。
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