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凍える月~吉之助の恋~
第16章 第七話 【辻堂】 一
ずっと歩き続けてきた脇道が更に二方向へと分かたれてゆく丁度その場所に、こぢんまりとした辻堂があった。何の神か仏を祀ったものかはしかとは判じ得ぬが、人ひとりくらいがやっと寝泊まりできるほどの小さな小さな御堂である。
そのお堂のほとりにこれまた、小さな池がひっそりと横たわっており、満々と水を湛えた池の面に薄紅色の睡蓮を幾つも浮かべていた。
「―!」
お彩は思わず声にならぬ叫びを上げた。
水面の上空を埋め尽くすかのように、一面赤トンボが群れ飛んでいる。小さな御堂を背景にしたその光景は幼いお彩に鮮烈な印象を与えた。
そのお堂のほとりにこれまた、小さな池がひっそりと横たわっており、満々と水を湛えた池の面に薄紅色の睡蓮を幾つも浮かべていた。
「―!」
お彩は思わず声にならぬ叫びを上げた。
水面の上空を埋め尽くすかのように、一面赤トンボが群れ飛んでいる。小さな御堂を背景にしたその光景は幼いお彩に鮮烈な印象を与えた。