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凍える月~吉之助の恋~
第3章 第一話 【凍える月~吉之助の恋~】 三
「親方―」
促すように、今度はやや大きな声で呼ばわる。
と、唐突に喜作が言った。
「以蔵に話はつけた。迎えに行ってやれ」
お絹と伊八が相惚れで夫婦(めおと)約束をしていることを、親方はよく知っている。伊八は突然の成り行きに仰天した。
「親方、それはどういうことなんですかい?」
訊ねると、喜作が笑った。
「そうだな、お前にはまだ話したことがなかったな。以蔵は何を隠そう、俺の昔なじみよ」
「え―」
伊八の表情が強ばるのに、喜作は苦笑を浮かべる。
「勘違いするなよ、俺があっちの世界にいたわけじゃねえ。他ならぬ以蔵―、蠍の以蔵にも一度は堅気の飾り職を目指したこともあったんだ」
促すように、今度はやや大きな声で呼ばわる。
と、唐突に喜作が言った。
「以蔵に話はつけた。迎えに行ってやれ」
お絹と伊八が相惚れで夫婦(めおと)約束をしていることを、親方はよく知っている。伊八は突然の成り行きに仰天した。
「親方、それはどういうことなんですかい?」
訊ねると、喜作が笑った。
「そうだな、お前にはまだ話したことがなかったな。以蔵は何を隠そう、俺の昔なじみよ」
「え―」
伊八の表情が強ばるのに、喜作は苦笑を浮かべる。
「勘違いするなよ、俺があっちの世界にいたわけじゃねえ。他ならぬ以蔵―、蠍の以蔵にも一度は堅気の飾り職を目指したこともあったんだ」