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凍える月~吉之助の恋~
第16章 第七話 【辻堂】  一
 その夜は、脇道から更に分かたれた道の一つの奥まったところにある小さな村に泊まった。一夜の宿を供してくれたのは人の好さそうな中年の百姓の夫婦で、子のおらぬ彼等はお彩を久しぶりに訪れた姪っ子のように可愛がり、もてなしてくれた。
 どうやら、その夫婦と母がずっと昔からの知り合いのようであることにも、お彩は仰天した。
 燃え盛る囲炉裏の焔を囲んで大人たちが話していることを洩れ聞いたところによれば、母は若い頃、一時はこの村に住んでいたらしい。お節介で涙もろくて働き者の母―、だが、母にはお彩の知らぬ過去がまとわりついているようであった。
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