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凍える月~吉之助の恋~
第16章 第七話 【辻堂】 一
もちろん、その時、お彩はとっくに眠ったふりをしていて布団の中にいたのだけれど、狭い部屋では大人たちの話は嫌が応にも丸聞こえだった。
だが、そこは子どものこと、旅の疲れからいつしか深い眠りの底に落ちていって、目ざめたときは既に雀がかしましくさえずる翌朝であった。
ささやかな朝飯を馳走になった後、お絹は百姓夫婦に幾度も礼を述べ、早々に江戸に向けて発った。細道を歩き再び脇道が二方向に分かれる場所まで戻ってきた時、お彩は誰かに呼ばれたような気がして、ふと足を止めた。
小さな辻堂と蓮池は相も変わらずひっそりとそこに存在していた。朝早くとあって、睡蓮の花は見事な大輪の花を咲かせ、赤トンボの代わりに二羽の蝶が花の上を寄り添い合うように飛んでいる。
だが、そこは子どものこと、旅の疲れからいつしか深い眠りの底に落ちていって、目ざめたときは既に雀がかしましくさえずる翌朝であった。
ささやかな朝飯を馳走になった後、お絹は百姓夫婦に幾度も礼を述べ、早々に江戸に向けて発った。細道を歩き再び脇道が二方向に分かれる場所まで戻ってきた時、お彩は誰かに呼ばれたような気がして、ふと足を止めた。
小さな辻堂と蓮池は相も変わらずひっそりとそこに存在していた。朝早くとあって、睡蓮の花は見事な大輪の花を咲かせ、赤トンボの代わりに二羽の蝶が花の上を寄り添い合うように飛んでいる。