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凍える月~吉之助の恋~
第3章 第一話 【凍える月~吉之助の恋~】 三
喜作は以蔵の悪行の数々をお上に訴え出ると迫ったのだ。女房も子もいない喜作には、しがらみがない。その捨て身の行為に、流石の以蔵も今回は引くことを誓い、吉蔵には手を出さなかった。しかし、以蔵の憎悪と憤りは烈しく、吉蔵へのやるかたない怒りは喜作への報復という形で表れた。
以蔵は懐刀ともいわれる腹心の吉之助に、伊八の身辺を徹底的に探るよう命じた。その結果、浮かび上がったのが、お絹という夜鳴き蕎麦屋の娘であった。
愛する者、守りたい者がおらぬはずの喜作にも泣きどころはある。その唯一の弱みが弟子の伊八であり、お絹は伊八の将来を言い交わした女であった。以蔵の憎しみの刃は何の拘わりもなきお絹に向けられることになる。
以蔵はお絹を人知れず拉致し、吉之助に手込めにするように指示した。無類の女好きと評判であった以蔵も数年前に大病を患ってからというもの、男性としての機能を失っていた。
以蔵は懐刀ともいわれる腹心の吉之助に、伊八の身辺を徹底的に探るよう命じた。その結果、浮かび上がったのが、お絹という夜鳴き蕎麦屋の娘であった。
愛する者、守りたい者がおらぬはずの喜作にも泣きどころはある。その唯一の弱みが弟子の伊八であり、お絹は伊八の将来を言い交わした女であった。以蔵の憎しみの刃は何の拘わりもなきお絹に向けられることになる。
以蔵はお絹を人知れず拉致し、吉之助に手込めにするように指示した。無類の女好きと評判であった以蔵も数年前に大病を患ってからというもの、男性としての機能を失っていた。