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凍える月~吉之助の恋~
第3章 第一話 【凍える月~吉之助の恋~】 三
ゆえに、自分の代わりに、お絹を手込めにしろと吉之助に言ったのだ。
「お前やお絹さんには済まねえことをしたな」
喜作がぼそりと言うと、伊八は首を振った。
「親方に吉蔵のことでひと肌脱いで貰ったのは、俺の方が頼んだからです。別に親方が謝りなさる筋の話じゃありやせん」
「だが、あの娘には可哀想なことをした。随分と辛い想いをしたに違(ちげ)えねえ」
喜作は呟くと、伊八を見た。
「以蔵には直談判で掛け合った。なに、あいつの後ろ暗い話のネタはごまんとあらァな。そいつを一つ二つ持ち出して、ちょいと脅してやれば、すぐに手を引くさ。伊八、―一刻も早く迎えに行ってやんな。そうして、とっととモノにしろ。あんな良い娘をいつまでも待たせるから、こんなことになるんだぞ?」
喜作の台詞に、伊八は返す言葉もない。
庭の片隅に椿の樹があった。白い大ぶりの花がたわわについている。
「お前やお絹さんには済まねえことをしたな」
喜作がぼそりと言うと、伊八は首を振った。
「親方に吉蔵のことでひと肌脱いで貰ったのは、俺の方が頼んだからです。別に親方が謝りなさる筋の話じゃありやせん」
「だが、あの娘には可哀想なことをした。随分と辛い想いをしたに違(ちげ)えねえ」
喜作は呟くと、伊八を見た。
「以蔵には直談判で掛け合った。なに、あいつの後ろ暗い話のネタはごまんとあらァな。そいつを一つ二つ持ち出して、ちょいと脅してやれば、すぐに手を引くさ。伊八、―一刻も早く迎えに行ってやんな。そうして、とっととモノにしろ。あんな良い娘をいつまでも待たせるから、こんなことになるんだぞ?」
喜作の台詞に、伊八は返す言葉もない。
庭の片隅に椿の樹があった。白い大ぶりの花がたわわについている。