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凍える月~吉之助の恋~
第3章 第一話 【凍える月~吉之助の恋~】 三
 あまりに純粋で無垢で汚れを知らぬこの花のようなお絹を守ってやりたい―、そう思い、敢えて男女の仲になることもせず、傍で見守っていたつもりだった。
 だが、現実はどうだろう、伊八は結局、お絹を死ぬよりも惨い目に遭わせてしまった。お人好しで少々勝ち気で、世間を知ったようなことを言うかと思えば、まるで初(うぶ)だ。そんなお絹を、伊八は心から守ってやりたい、いつも傍にいて一人前の女に成長してゆくのを見届けたいと願ってきた。
 それなのに、自分は惚れた女一人さえ守ってやることができなかった。今、伊八は深い悔恨の中にいた。
「ごめんなすって」
 伊八は喜作に頭を下げると、脱兎の如く走り出した。

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