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第3章 第一話　【凍える月～吉之助の恋～】　三

　喜作からお絹の居場所が本源寺だと知らされた伊八は、その足で本源寺へ向かった。本源寺は江戸の外れにある。苔むした長い石段を辿り、半ば朽ちかけた山門をくぐると、小さな御堂が見えてくる。その回りを丈高く生い茂った草木がぐるりと囲み、庭は狐狸の住み処となっていた。
　冴え渡った冬空がひろがり、寒さ厳しい朝だった。
　夜間はいかさま賭場となり、あまたの人が集うここも日中は極めて手薄になる。堂の前で見張りらしい若い男が油断のない視線を四方に投げている。吉蔵もかつてはこの本源寺の賭場の用心棒だったのだ。
　伊八は見張りの若い者に〝喜作の弟子の伊八〟と堂々と名乗った。若い用心棒はすぐさま奧へ引っ込んだ。