この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
凍える月~吉之助の恋~
第3章 第一話 【凍える月~吉之助の恋~】 三
伊八は殺してやりたいほどの憎悪を己れの奥底へと押し込んで、振り絞るように言った。
「お前が吉之助か?」
長身の男がゆっくりと振り向く。上背があるといわれる伊八よりも更に背が高い。
美しい男だった。たとえるなら、今のこの季節、真冬の夜空にひそやかに浮かぶ月のような。触れれば忽ちにして凍てついてしまうほどに冷たい月。伊八の脳裏に、この男に抱かれているお絹の姿が浮かび上がる。
白くか細い肢体を吉之助の上でのけぞらせ、歓びの声を上げるお絹。吉之助にまたがったお絹の解き流した黒髪が妖しく揺れる。男に貫かれて恍惚(うっと)りとした表情を浮かべる女は、伊八の知らぬ女のようであった。そこで、伊八は狼狽(うろた)えて、その淫猥で不快な光景を頭の中から追い払った。
「お前が吉之助か?」
長身の男がゆっくりと振り向く。上背があるといわれる伊八よりも更に背が高い。
美しい男だった。たとえるなら、今のこの季節、真冬の夜空にひそやかに浮かぶ月のような。触れれば忽ちにして凍てついてしまうほどに冷たい月。伊八の脳裏に、この男に抱かれているお絹の姿が浮かび上がる。
白くか細い肢体を吉之助の上でのけぞらせ、歓びの声を上げるお絹。吉之助にまたがったお絹の解き流した黒髪が妖しく揺れる。男に貫かれて恍惚(うっと)りとした表情を浮かべる女は、伊八の知らぬ女のようであった。そこで、伊八は狼狽(うろた)えて、その淫猥で不快な光景を頭の中から追い払った。