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凍える月~吉之助の恋~
第3章 第一話 【凍える月~吉之助の恋~】 三
伊八が本源寺の裏庭で吉之助と対峙していた時、お絹は薄い夜具に横たわっていた。お絹はつい先刻まで吉之助と狂おしいまでのひとときを過ごしていた。情事の後の気だるさを持て余しながら、お絹は醒めた眼で自分自身を見つめていた。
この頃、自分がどんどん壊れてゆくような気がする。吉之助に抱かれる度、心が壊れ、自分が自分でなくなってゆく。
冷たい月の光に抱(いだ)かれ、お絹は芯まで凍えてしまうのかもしれない。吉之助に貫かれ、歓びの声を洩らし腰をくねらせる自分は、もう昔のお絹ではない。屈託ない伊八の笑顔をほのかな憧れをもって無邪気に眺めていた頃のお絹は、もうどこにもいない。
果たして、今のこんな汚れ切ったお絹を見ても、伊八は昔と変わらず所帯を持とうと言ってくれるだろうか?
この頃、自分がどんどん壊れてゆくような気がする。吉之助に抱かれる度、心が壊れ、自分が自分でなくなってゆく。
冷たい月の光に抱(いだ)かれ、お絹は芯まで凍えてしまうのかもしれない。吉之助に貫かれ、歓びの声を洩らし腰をくねらせる自分は、もう昔のお絹ではない。屈託ない伊八の笑顔をほのかな憧れをもって無邪気に眺めていた頃のお絹は、もうどこにもいない。
果たして、今のこんな汚れ切ったお絹を見ても、伊八は昔と変わらず所帯を持とうと言ってくれるだろうか?