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凍える月~吉之助の恋~
第3章 第一話 【凍える月~吉之助の恋~】 三
あまりに汚れた我が身を思うと、涙が滲んでくる。
お絹の白い頬をひとすじの涙が流れ落ちた時、ふと庭の外で人の話し声を聞いたように思い、丸窓に近寄った。そっと耳を澄ませてみると、確かに人の声である。こんなことは初めてだ。もしかしたら、助けを求められるかもしれない―と、一縷の希望をつないで丸窓にはめ込まれた障子戸を開けた。
刹那、お絹は信じられない光景を見た。
絶望と汚辱の日々に泣きながら眠ってしまった夢の中で幾度となく見た男の顔だった。紅白の花が咲く椿の樹の傍らで、伊八と吉之助が立ち話をしていた。
遠目にも、二人の雰囲気が剣呑なことは判る。伊八の身に何かあったらと思うと、お絹は不安で、いても立ってもいられなかった。
お絹の白い頬をひとすじの涙が流れ落ちた時、ふと庭の外で人の話し声を聞いたように思い、丸窓に近寄った。そっと耳を澄ませてみると、確かに人の声である。こんなことは初めてだ。もしかしたら、助けを求められるかもしれない―と、一縷の希望をつないで丸窓にはめ込まれた障子戸を開けた。
刹那、お絹は信じられない光景を見た。
絶望と汚辱の日々に泣きながら眠ってしまった夢の中で幾度となく見た男の顔だった。紅白の花が咲く椿の樹の傍らで、伊八と吉之助が立ち話をしていた。
遠目にも、二人の雰囲気が剣呑なことは判る。伊八の身に何かあったらと思うと、お絹は不安で、いても立ってもいられなかった。