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凍える月~吉之助の恋~
第4章 第二話 【鈴の音】 一
お絹が身体の変調に気付いたのは十日ほど前のことだ。烈しい吐き気に頻繁に襲われ、何となく身体がだるく熱っぽくなった。最初は風邪の引き始めかと思っていたのだけれど、症状は日毎に悪化した。
もしやと思ったのは、つい三日前だった。身籠もったのではという想いが唐突に頭をかすめ、愕然とした。そう言えば、月のものもここ二、三カ月はない。別にたいしたことではないと気にも止めていなかったのだが、ここに至って、お絹は俄に心配になってきた。
お絹と伊八が所帯を持ってから、まだほんの一カ月しか経っていない。なのに、懐妊というのは誰が考えてみても面妖な話だ。肝心のお絹自身に心当たりがとんとなかった。伊八はお絹を大切に思い、結婚するまで身体を重ねたことはないのだ。
もしやと思ったのは、つい三日前だった。身籠もったのではという想いが唐突に頭をかすめ、愕然とした。そう言えば、月のものもここ二、三カ月はない。別にたいしたことではないと気にも止めていなかったのだが、ここに至って、お絹は俄に心配になってきた。
お絹と伊八が所帯を持ってから、まだほんの一カ月しか経っていない。なのに、懐妊というのは誰が考えてみても面妖な話だ。肝心のお絹自身に心当たりがとんとなかった。伊八はお絹を大切に思い、結婚するまで身体を重ねたことはないのだ。