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凍える月~吉之助の恋~
第4章 第二話 【鈴の音】  一
 昔からの馴染み客である精治に頼まれ、その弟吉蔵を以蔵一味から抜けさせる手助けをしたにすぎない。お絹はいつも我が身より他人(ひと)のことばかり考える性分だ。お節介焼きというのか人が好いというのか、良人の伊八に呆れられるほどだ。そんなお絹が吉蔵逃亡に拘わり合ったばかりに、以蔵に逆恨みされ酷(ひど)い目に遭った。
 それなのに、吉之助に犯されて身籠もるとは、御仏はこれ以上、死して煉獄に落ちるよりも辛い想いに耐えろと仰せなのか。
 お絹は悶々として日々を過ごした。吐き気は唐突に襲ってくるので、滅多に外へも出なくなった。数日前からは夜泣き蕎麦屋の仕事も休んで終日家に引きこもっている。今も吐きそうになっているところを誰にも見られたくなかったゆえ、こうして人気のない時間帯を見計らって表に出てきた。
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