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凍える月~吉之助の恋~
第4章 第二話 【鈴の音】 一
おさんは、お絹の腹の子の父親が伊八だと信じて疑ってもおらぬようだ。伊八は所帯を持つ前に何度か甚平店のお絹の住まいを訪れたこともあった。おさんは、お絹と伊八が所帯を持つ前から男女の仲であったと思い込んでいるのだろう。
だが、当のお絹も伊八もそんなことはあり得なかったと知っている。
―もし、身籠もったことを伊八っつぁんが知ったら―。
お絹はそれを考えただけで、気が狂いそうになった。漸く吐き気も去り、お絹は蒼白な顔で立ち上がった。
「私も初めてのときは悪阻が烈しかったものさ。そんなときは無理をしちゃ駄目だよ。何か手助けできることがあれば何でもするから、遠慮なく言っとくれ」
おさんは浅黒い顔に人の好さそうな笑いを刻んで言った。
だが、当のお絹も伊八もそんなことはあり得なかったと知っている。
―もし、身籠もったことを伊八っつぁんが知ったら―。
お絹はそれを考えただけで、気が狂いそうになった。漸く吐き気も去り、お絹は蒼白な顔で立ち上がった。
「私も初めてのときは悪阻が烈しかったものさ。そんなときは無理をしちゃ駄目だよ。何か手助けできることがあれば何でもするから、遠慮なく言っとくれ」
おさんは浅黒い顔に人の好さそうな笑いを刻んで言った。