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凍える月~吉之助の恋~
第4章 第二話 【鈴の音】 一
「ここのところ、ろくに食べてねえんじゃないのか?」
「風邪気味だから、それで食が進まないのかしら」
お絹が曖昧に笑うと、伊八は真顔で言った。
「気を付けろよ。風邪だからって油断はならねえぞ。お前の親父さんも風邪をこじらせたんだろ」
お絹の父参次は質(たち)の悪い流行風邪(はやりかぜ)で亡くなった。冬になると、こういった悪質な風邪が江戸に蔓延し、多くの人々の生命を奪った。
「大丈夫、夜泣き蕎麦の方もちゃんと休んでるし、無理はしてないから」
お絹は必要以上に明るい声音で応えた。
「そうか、くれぐれも無理はしちゃならねえぞ」
伊八はなおも気遣わしげな表情だった。
「風邪気味だから、それで食が進まないのかしら」
お絹が曖昧に笑うと、伊八は真顔で言った。
「気を付けろよ。風邪だからって油断はならねえぞ。お前の親父さんも風邪をこじらせたんだろ」
お絹の父参次は質(たち)の悪い流行風邪(はやりかぜ)で亡くなった。冬になると、こういった悪質な風邪が江戸に蔓延し、多くの人々の生命を奪った。
「大丈夫、夜泣き蕎麦の方もちゃんと休んでるし、無理はしてないから」
お絹は必要以上に明るい声音で応えた。
「そうか、くれぐれも無理はしちゃならねえぞ」
伊八はなおも気遣わしげな表情だった。