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凍える月~吉之助の恋~
第4章 第二話 【鈴の音】 一
その夜、お絹は一晩中眠れなかった。伊八はどこまでもお絹の身を案じ、気遣ってくれている。よもや女房が他の男の子を身籠もっているとは想像だにしていない。お絹は伊八の顔がまともに見られなかった。狭い四畳半の部屋に粗末な夜具を並べて眠るのが常であったが、ここ二、三日、お絹の健康を気遣ってか、伊八はお絹を抱こうとはしなかった。
傍らに眠る伊八の寝息を聞きながら、お絹は何度も床のなかで寝返りを打った。ついに暁方までまんじりともできず朝を迎えた。
傍らに眠る伊八の寝息を聞きながら、お絹は何度も床のなかで寝返りを打った。ついに暁方までまんじりともできず朝を迎えた。