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凍える月~吉之助の恋~
第4章 第二話 【鈴の音】 一
その日は朝から親方の喜作の許に用事があり、伊八は出掛けていった。長屋を出る時、お絹はいつものように三叩土(たたき)に降りて伊八を見送った。
今朝も殆ど朝飯を食べなかったのに加え、昨夜は一睡もできていないので、余計に顔色も悪かった。そんなお絹を見つめ、伊八はくどいほど念を押した。
「いいか、今日は必ず医者に行って、ちゃんと診て貰ってくるんだぞ?」
「そんなに何度も言わなくたって、判りましたよ」
お絹は、おどけた口調で応えた。
「いってらっしゃい」
軽く片手を上げて背を向けた伊八が数歩あるいて、ふと振り返った。
「できるだけ早く帰ってくるから、無理をするなよ」
今朝も殆ど朝飯を食べなかったのに加え、昨夜は一睡もできていないので、余計に顔色も悪かった。そんなお絹を見つめ、伊八はくどいほど念を押した。
「いいか、今日は必ず医者に行って、ちゃんと診て貰ってくるんだぞ?」
「そんなに何度も言わなくたって、判りましたよ」
お絹は、おどけた口調で応えた。
「いってらっしゃい」
軽く片手を上げて背を向けた伊八が数歩あるいて、ふと振り返った。
「できるだけ早く帰ってくるから、無理をするなよ」