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凍える月~吉之助の恋~
第4章 第二話 【鈴の音】 一
―間違いなくおめでただね。もう五ヶ月には入ってるよ。今まで気付かなかったのかえ?
おかねはひととおりお絹を診察した後、少し無愛想とも思える口調でお絹を見もせずに言った。
―何も変わりがなかったんです。吐き気の方もつい十日ほど前から始まったばかりで―。 お絹が口ごもりながら言い訳するように言うと、おかねは鼻を鳴らした。
―普通、悪阻はもう少し早くに始まるもんなんだけどね。早い人なら、五ヶ月と言えば、そろそろ吐き気の方も治まってくるもんさ。ま、そっちの方はともかく、お前さんは初子だから、今まで気付かなかったのかねえ。
おかねは腕の方は良いが、愛想は悪いと、これもまた評判だ。このとりつく島もないのには閉口するけれど、名医と呼ばれる医者が見放した難産の妊婦をおかねが無事身二つにさせたという逸話は幾つもあるのだ。
おかねはひととおりお絹を診察した後、少し無愛想とも思える口調でお絹を見もせずに言った。
―何も変わりがなかったんです。吐き気の方もつい十日ほど前から始まったばかりで―。 お絹が口ごもりながら言い訳するように言うと、おかねは鼻を鳴らした。
―普通、悪阻はもう少し早くに始まるもんなんだけどね。早い人なら、五ヶ月と言えば、そろそろ吐き気の方も治まってくるもんさ。ま、そっちの方はともかく、お前さんは初子だから、今まで気付かなかったのかねえ。
おかねは腕の方は良いが、愛想は悪いと、これもまた評判だ。このとりつく島もないのには閉口するけれど、名医と呼ばれる医者が見放した難産の妊婦をおかねが無事身二つにさせたという逸話は幾つもあるのだ。