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凍える月~吉之助の恋~
第4章 第二話 【鈴の音】 一
―まさか、また以蔵の手先に連れ去られたのか!?
伊八の心に嫌な予感が駆け抜けた。
以蔵は蠍と異名を取るごとく、情け容赦もないことでは知られている。しかも、先の事件でも判ったように執念深い。いまだに吉蔵を抜けさせた件で伊八や喜作を恨んでいても不思議ではない。
しかし、お絹には何の罪もない。お絹は吉蔵の兄精治から弟探しを頼まれたにすぎないのだ。以蔵のやり方は卑怯だ。伊八が憎いのなら、伊八本人を狙えば良いのに、その泣き所を突いてくる。
万が一、お絹の身に何かあったらと思うと、伊八は気が気ではなかった。夫婦になってから、お絹の存在は伊八にとってより大切なものになった。いつもくるくると働き、泣き言の一つも言わない。自分より他人のことばかり心配する。
伊八の心に嫌な予感が駆け抜けた。
以蔵は蠍と異名を取るごとく、情け容赦もないことでは知られている。しかも、先の事件でも判ったように執念深い。いまだに吉蔵を抜けさせた件で伊八や喜作を恨んでいても不思議ではない。
しかし、お絹には何の罪もない。お絹は吉蔵の兄精治から弟探しを頼まれたにすぎないのだ。以蔵のやり方は卑怯だ。伊八が憎いのなら、伊八本人を狙えば良いのに、その泣き所を突いてくる。
万が一、お絹の身に何かあったらと思うと、伊八は気が気ではなかった。夫婦になってから、お絹の存在は伊八にとってより大切なものになった。いつもくるくると働き、泣き言の一つも言わない。自分より他人のことばかり心配する。