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凍える月~吉之助の恋~
第4章 第二話 【鈴の音】 一
伊八の愛を得たお絹は大輪の花が開くように、その美貌に艶(つや)やかさを帯び始めている。
そんなお絹に、伊八はますます惹かれずにはおれない。
どこかに行って留守にしているのかとも思ったけれど、こんな時分に出掛けるというのも妙だ。元気になって屋台を引いて商売に出ていったのかとも一瞬考え直してみたが、屋台は長屋の路地裏にちゃんと置いてあった。
「お絹、お絹―!」
半狂乱になって愛しい妻の名前を呼んだが、返ってくる返事はない。伊八は茫然として薄暗い家の中を見た。
そんなお絹に、伊八はますます惹かれずにはおれない。
どこかに行って留守にしているのかとも思ったけれど、こんな時分に出掛けるというのも妙だ。元気になって屋台を引いて商売に出ていったのかとも一瞬考え直してみたが、屋台は長屋の路地裏にちゃんと置いてあった。
「お絹、お絹―!」
半狂乱になって愛しい妻の名前を呼んだが、返ってくる返事はない。伊八は茫然として薄暗い家の中を見た。