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凍える月~吉之助の恋~
第5章 第二話 【鈴の音】 二
お絹の意思とは無関係に元気良く動く小さな生命は、俄然、己れの存在を主張しているように思えた。刹那、子どもを流そうと、たとえ一時たりとも考えた自分がどれほど身勝手かを知った。
確かに吉之助の子を身籠もったのはお絹の望むところではない。しかし、そのことと腹の子と何の拘わりがあるというのか。赤子には生きる権利がある。
無事生まれ落ちてからの長い果てしのない人生は、お絹のものではない、他ならぬ赤子自身のものだ。たとえ我が子といえども、その生命を親の勝手でむざと摘み取ったりはできない。子に生きる権利があるなら、親には子を生み育ててやる責任があるのだ。
そう思うと、最早生むことしか考えられなかった。
確かに吉之助の子を身籠もったのはお絹の望むところではない。しかし、そのことと腹の子と何の拘わりがあるというのか。赤子には生きる権利がある。
無事生まれ落ちてからの長い果てしのない人生は、お絹のものではない、他ならぬ赤子自身のものだ。たとえ我が子といえども、その生命を親の勝手でむざと摘み取ったりはできない。子に生きる権利があるなら、親には子を生み育ててやる責任があるのだ。
そう思うと、最早生むことしか考えられなかった。