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凍える月~吉之助の恋~
第5章 第二話 【鈴の音】 二
が、良人に合わせる顔がないという事実には変わりはなかった。このままおめおめと帰り、伊八に懐妊を告げられるものではなかった。
伊八は度量の大きい男だ。元々すべての事情を承知でお絹を女房にしたのだから、仮に吉之助の種を宿していたとしても、自分の子として引き受けるに相違なかった。だが、伊八のそんな優しさに甘えても良いはずがない。
お絹は思案の末、江戸の近郊の村に身を落ち着けた。小さな農村で、伊八の故郷である村もからも近いところだ。その村の片隅に小さな仕舞屋を借り、ひっそりと隠れ住んだ。
お絹には、たいした金の持ち合わせなどない。
伊八は度量の大きい男だ。元々すべての事情を承知でお絹を女房にしたのだから、仮に吉之助の種を宿していたとしても、自分の子として引き受けるに相違なかった。だが、伊八のそんな優しさに甘えても良いはずがない。
お絹は思案の末、江戸の近郊の村に身を落ち着けた。小さな農村で、伊八の故郷である村もからも近いところだ。その村の片隅に小さな仕舞屋を借り、ひっそりと隠れ住んだ。
お絹には、たいした金の持ち合わせなどない。