この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
凍える月~吉之助の恋~
第1章 【第一話 凍える月~お絹と吉之助~】 一
が、身体はまるで金縛りにあった如く微動だにせず、お絹は焦った。せめて手だけでもと、右腕を懸命に前方に差しのべようとする。
前方の小さな光は徐々に大きくなってゆく。やがて、見る間に大きな光の球(たま)と化したそれは一瞬で弾けた。
あまりの眩しさに、お絹は眼を閉じた。しばらくして、恐る恐る眼を開いた時、光の球が浮かんでいた場所にひっそりと佇むその人は少し哀しげな表情(かお)をしている。
―伊八っつぁん!!
お絹は思わず叫んだが、その声は声にならず、お絹は空しく口をうごめかすだけだ。伊八はお絹の屋台に通ってくる常連の一人である。丁度、一年前に〝惚れた〟と告白され、伊八を憎からず思っていたお絹はその想いを受け容れ、二人は将来を言い交わす仲となった。
前方の小さな光は徐々に大きくなってゆく。やがて、見る間に大きな光の球(たま)と化したそれは一瞬で弾けた。
あまりの眩しさに、お絹は眼を閉じた。しばらくして、恐る恐る眼を開いた時、光の球が浮かんでいた場所にひっそりと佇むその人は少し哀しげな表情(かお)をしている。
―伊八っつぁん!!
お絹は思わず叫んだが、その声は声にならず、お絹は空しく口をうごめかすだけだ。伊八はお絹の屋台に通ってくる常連の一人である。丁度、一年前に〝惚れた〟と告白され、伊八を憎からず思っていたお絹はその想いを受け容れ、二人は将来を言い交わす仲となった。