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凍える月~吉之助の恋~
第5章 第二話 【鈴の音】   二
 吉之助はお絹を静かな眼差しで見つめた。
「腹の赤ン坊は誰の子だ?」
 その問いに、お絹の華奢な身体がピクンと撥ねた。
「亭主の子か? それとも―」
「止めて!」
 お絹は悲鳴のような声を上げた。
「この子は誰の子でもありません。私の、私一人の子どもです」
 お絹は泣きながらも毅然と応えた。
 吉之助は、そんなお絹を黙って見る。
 ふいに、吉之助がお絹の傍らに置かれていた小さな産着を拾った。まるで愛おしいものに触れるように産着を眺めた。その研ぎ澄まされた美しさを持つ顔の上を様々な感情が通り過ぎていったようだった。
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