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水流金魚
第3章 溺れる金魚
「お、もう少し。さん・にー・いち」

 優祐さんがカチンと指を鳴らすと同時に東京タワーが消えた。

「すごいっ……。ホントに消えるんだ。ドラマの中だけだと思ってた」

 そう、ドラマの中の。

「ちょっ?! どうしたの」

「あっ……あれっ」

 優祐さんの手に雫が落ちる。今日は泣くつもりなんてなかった。だけど、こんなことされたら苦しくなる。優祐さんには奥さんがいる。それでも私のことだって本気で愛してくれている。それくらいのこと馬鹿な私にだって分かる。それなのに私はどうして。優祐さんのこと嫌いじゃない。むしろ好きだ。だけど、咲ちゃんと出逢ってしまったから。

 優祐さんは私に唇を重ねる。さっき吸っていた煙草の苦い味。
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