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水流金魚
第3章 溺れる金魚
「そんな顔されるともう我慢できない。俺のことちゃんと考えて」

「えっ……」

「いるんでしょ。他に好きな人。今日の旅行の意味も――」

「なんで……」

「分かるよ。服の趣味も微かな香りの違いも。旦那さんは騙せても俺のことは騙せない。俺は花のこと今までの誰よりも愛してた」

 私の体に温かいものが伝う。初めて感じた優祐さんの涙。この人が泣くことなんて今まで絶対になかったのに。それでも聞きたくなってしまうのは。

「奥さんよりも?」

「……ごめん」

 やっぱり。分かっていたけれどそうなのだ。私は二番目。私はこの人の一番にはなれない。だけど咲ちゃんだったら。そんな打算、最低だって自分でも嫌になるくらいに分かっている。それでも私は咲ちゃんの元に行く。そう決めたんだ。だからこれが優祐さんとの最後の――。
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