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水流金魚
第5章 金魚鉢の金魚
「私はっ……」

 翔ちゃんの気持ちを聞いて嗚咽が止まらなくなった。私はなんて馬鹿なことをしたのだろう。こんなに優しい人をどれほど傷つけてしまったのだろう。騙せているなんて思い込んで蔑んでホント最低だ。

 自分の悪いところは何一つ考えないで、言い訳ばかりして翔ちゃんのせいにばかりしていた。自分の悪を正当化していたんだ。最初の約束を忘れていたのは私のほうだった。翔ちゃんはいつも真っ直ぐに私にぶつかってきてくれていた。それなのに私は……。現実と向き合うことから逃げていたのは私のほうだった。

 金魚鉢から抜け出して、広くて流れの早い水流の中で溺れて死にそうになって。最初から金魚鉢に閉じ込められていたわけじゃない。金魚鉢に守られていたのだ。どうしてそのことに今まで気がつけなかったのだろう。

 身勝手な金魚の千切れた背鰭に包帯を巻いて金魚鉢に戻そうとしてくれているこの人は、この人だけが本当の愛で私に接してくれていたのだ。親が子へ向けるような無償の愛をいつだって私にくれていた。それなのに反抗期の子どものようになっていたのは私の方だった。
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