この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ただ、あなただけに愛を
第1章 ライン
二週間ぶりに掛けた留守番電話の返事は、スタンプも何も付いていないメッセージで返ってきた。
『人を誘うなら、せめて部屋を片づけてからにしたらどうだ』
峰子がそれを読んだのは、床にコンビニの袋と洋服が散らばる自室。寝転ぶベッドの上も、菓子の食べかすが散らかっていた。
「うー……せっかく、誕生日なのにっ!」
峰子は枕にスマホを投げつけ、深夜にもかかわらず叫ぶ。毎日でも会いたいと思う気持ちを我慢し、声を聞きたくても普段は電話すら自粛。しかし誕生日くらい少しは甘えてもいいだろうと電話を掛けた返事がこれだ。
ベッドから下り、峰子は床に脱ぎ捨てた洋服を掴む。露出の高い服を好む彼のために、峰子は十八の頃からずっとミニスカートしか履いた事がない。部屋着すら気を遣って、スウェットではなく流行りのものを選んでいた。
くたびれた服を部屋の隅に投げると、峰子はすぐベッドに座り直す。
「ああもう、片付けとかめんどくさい!」
六月十七日、夜十二時。峰子三十歳の誕生日は、最悪のメッセージから始まった。