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壊してほしい
第2章 願望
木の板を【open】にひっくり返す。



調理服を着て、
キッチンに立つ。



雫石は帰るなり私服に着替え、
氷月のエプロンを付けて丸テーブルを拭き始めた。




細い腰に蝶々結びにしてあるエプロンの紐が見える。


ニットにジーンズの恰好の雫石は、
スラリとしていて美しい。



ガランガランとベルが鳴る。


客が入ってきた。サラリーマン風の壮年の男性だ。

『いらっしゃいませ』


『ナポリタンとコーヒー』


『かしこまりました』
氷月はナポリタンを作る。


火力を強くし、
敢えてケチャップ感を増やす。


しめじ、ピーマン、人参にベーコン。
具材たっぷりのナポリタンの上に、
半熟の目玉焼きを乗せて出来上がり。



『お待たせ致しましたー』

男性客は「ありがとう」と氷月を見、
パクつき始める。


片手で文庫本を読んでいた。




遅い昼食なのだろう。


氷月はコーヒーを運び、
一礼して下がる。




雫石に食器を全て洗ってもらい、
乾燥機にかけ高熱滅菌した。




男性客は帰り際に「美味かったよ」と氷月に笑いかけて去って行った。



それから数人、
ティータイムに客が来た。


今日は午前中に買い出しに出たから、
短時間で焼いたシフォンケーキがティータイムメニューだ。


市販のホイップクリームをかけ、
ミントの葉を添えた。




客たちが捌けていく。

『雫石?
食べる?シフォンケーキ』
氷月はせっせと滅菌庫から食器を出して棚に並べている雫石に声をかけた。







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