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壊してほしい
第3章 染めたいよ
一日が終わる。


2階の氷月の部屋で、
2人はゆっくりしていた。


雫石がキョロキョロしている。

『どした?』


『あ、んーと…………
氷月さんの写真が無いなぁって思って』

ボブの髪を搔きながら雫石が気まずそうに言った。




『あー…………
卒アルとかそういうやつ?』



『うん。卒アルもだけど、
氷月さんの小さな頃とか見たいなぁと思って』



氷月も頭を掻いた。

この頃2人の仕草が似ているのは気のせいかなと思いつつ………………



『無いんだ、写真』


『えっ?
1枚も?』


『うん。

祖父さんが亡くなった時に全部捨てたんだ。

庭で燃やした』




『…………理由、訊いてもいい?』


『うん。
つうか大した理由じゃないんだよ。
祖父さんが死んで、俺は高校生だけど1人で生きてかなくちゃならなくてさ。
気合いというか、
過去は捨てる!みたいに思って』



『過去は捨てる……………』




『気障な言い方だけど。

1人でやってくために、

生まれ変わりたかった』


雫石がぽかんと口を開いている。




氷月はそれを見て、

急に恥ずかしくなった。

『あ、いや、元々そんなに写真も無かったからさ?
フライパンで炒めたら屑になるくらいだったし』

『そっか……………、

氷月さんも私と似た部分があったんだね』


雫石は生真面目に俯いて溢した。



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