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無意味なPKを持つJKの話
第5章 コピー
「河原、行くぞ」

背中を向けた小川がそう言い残し、また歩き出す。

明子も自分の荷物を持って、その後を追いかけた。



いつもの河原一帯は、ここ数日の雨でぐっしょり濡れている。
大きな水たまりもあって、自転車がうまいこと進まない。

なんとかいつものベンチにたどり着き、タオルを広げて明子はその上に座った。

「部活は、よかったの?」

何から話し出せばいいか分からず、とりあえず思いついた事を聞いてみる。

「...今日は帰れって言われた」

小川は、ベンチの上の水気を手ではらって座った。
幾分冷たいが仕方ない。

「そっか...」

いつもの様に、チカラの特訓をするでもなく、2人並んで座ったままだ。

沈黙が続いて、いたたまれなくなって、また明子から話を振る。

「やっぱ雲が出てきたよね。明日からまた雨かな」

今朝はなんとか天気を保っていたが、怪しげに黒い雲が出てきている。
ベンチから見える山の向こうの空に、その雲がかかっている。
日が長くなってきていて、7時近くても夕やけというカンジではない。
 
「梅雨だからな」

「早く明けないかな。だって、ほらレインコート、嫌じゃない?」

男子のレインコートは、紺色で。
ズボンと上着に分かれているぐらいで、あとは基本女子のと一緒だ。

レインコートがダサくて嫌な話を小川にする。
なぜだろう。このレインコートのことは、小川のがよく知ってるだろうに。

「せめてにフードがさ、もうちょっとどーにかなんないかなって思うわけ」

フードの部分は男女同じ仕様になっているハズだ。

とはいっても、坊主がチョット伸びたような小川の髪型じゃ、タオルですぐ乾くだろうけど。

また沈黙になって、小川が話し出すのがなんだか怖くて。
ひたすら喋り続ける。

「んでね、髪の毛が濡れて嫌だから髪を短くしたんだけど。失敗だったね。やっぱりもっと短く、ショートとかにしよっかなと思ってー。今日は月曜で美容院休みだからさ、明日にでも行って切...」

「...切るなよ」

それまでほとんど黙って聞いているだけだった小川が、向こうの山を見たまま小さくつぶやいた。

どんな顔をしているのか気になったが、横に向けれない。

「って、こようかと思...」

「いいから。切るな」

理由は言わない。
ないのに、切るなと言う。

「でも、...嫌じゃない?」
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