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無意味なPKを持つJKの話
第8章 カラダとココロのキョリ
ビクッと大きく動いたが、それは感じてというより、悪寒が走った風だ。

「うわっ」

息が当たった所を手で押さえて、驚いて少し体を離す。
明子のその行動に眉をひそめている。

「何してんだよ」

「...どう?」

「は?どうって。今息吹きかけたんだろ。気持ちワルイ。生暖かくて」

失礼しちゃう!

「離れろよ。暑いから」

そう言って、小川から座ったまま足元の座布団を掴んで少し体を移動する。

「えー。何ともないの?」

そんな扱いが悔しくて、そのまま小川に詰め寄る。
少しぐらいは慌ててくれないと、明子の赤っ恥だ。

「ちょっ。近づくなって。何やってんだよ」

「ねぇ、前から気になってたんだけどさー。小川って童貞?」

その言葉には、一気に赤くなる。

あ、少しは動揺してる?

「わりぃかよ」

真っ赤な顔を背けて、顔で隠そうとしている。
普段はクールなのに、その姿がなんだか楽しい。

後ずさりする小川を追いかけて、ベッドの横に小川の背中が当たるとこまで追い込んだ。

「えー。じゃ、教えてあげよっか〜?」

挑発するように近づいて、また息を吹きかける。

今度は、明らかにさっきとは違う反応でビクッとなった。

背けたままの真っ赤な顔が見たくて、その顔に手をかけた。

カウンターでその手首が掴まれたと思った途端、天地がひっくり返って、明子のアタマが床にぶつかる。

「...っ!いったー」

目を開けると、小川の顔が至近距離になっていて、今度は明子のほうがビクッとなる。

「マジで言ってんの?」

あの目だ。

冷たいのとも違う。
少し切なさを孕んだ何とも言えない光をたたえて。

「俺が本気にしてもいーワケ?」

元々低めの声が一層低くなって、明子の胸に刺さる。

まさか、小川の反撃に合うとは思ってもみなかった。
ある程度からかったら、笑って終わりにしようと思っていたのに。
こうなったら引くに引けない。

「...別にいいけど。私は、初めてじゃないし」

完全なる負け惜しみだ。

「彼氏いるんじゃなかったのかよ」

軽く侮蔑の色が声に乗った。

そうだった。そんな風なこと言ったかも。

「...別れたし」

「は?何で」

当然知らなかったからか、少し動揺が見て取れる。

「遠距離、だから?」

それは嘘じゃない。ただ、引っ越す前にそう判断しただけだ。
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