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無意味なPKを持つJKの話
第9章 友達以上、セフレ未満
そこでそのまま走り出せば良かったのに、咄嗟に両足を着いて振り返ってしまう。

「ほんと、似てるの後姿だけなんだ」

顔をじっと見ながらまた突き刺さる言葉を放つ。
それは感想というより、明子を蔑み傷つける為に言った言葉のようで、明子の反応を見て喜んでいるようだ。

しかし、この女性はユイの事を知っているのだろうか。
未だに明子は写真を見たことも無いのに。
この女性はー。

「もうウチに来ないでくれる?」

腕組みをして、仁王立ちになり、明子をじろりと睨む。

一週間前までの、明子と小川の関係を知っているのだろう。

「あの子、ユイちゃんのことやーっと吹っ切れて来てたのに。アンタのセイで、イロイロ思い出して...」

「ちー」

そんなに大きな声ではなかったが、それは小川の声だった。

いつの間にか2人の横に現れた小川は、家の中ではない場所から現れたらしい。

明子はもちろん、説教を始めた“ちー”と呼ばれた人物も驚いている。

「和樹...」

「もう、終わった?俺家に入りたいんだけど。外痒くて」

蚊に刺されたのか、腕や足をやたらと掻いている。
呑気なその言葉に、張り詰めていた空気が変わる。

「アンタ、外居たの?中いたらいいのに」

近づく女性の手から紙袋をひょいと取り上げ、中をチラ見する。

「梨じゃん。これ、岡本がくれんの?」

「あ、うん、おすそわけなんだけど...」

「はい。じゃ、ねーちゃん剥いて」

取り上げたばかりの紙袋を押し返し、その手でそのまま玄関の方に押しやる。

え?今、なんて?

「トモさんも食べるんじゃね?」

“ちー”こと、お姉さんらしき人が何か言い出す前に、小川が次の言葉を繰り出す。

「岡本も、いつまで自転車乗ってんの。ウチ入って。そこ立ってたら蚊に刺されるよ」

当然のようにそう言われて。

言われた通り、自転車を止めてお邪魔した。


部屋で居心地悪く待っていると、小川が剥いた梨を片手に部屋に入ってきて、珍しく部屋のドアを閉めた。

その瞬間お姉さんの顔が廊下に見えて、隣の部屋もドアの音がした。

ハッキリ聞こえないが、隣の部屋からボソボソとこもった会話が聞こえる。

小川は何食わぬ顔で、いつもの位置に座って梨を食べている。
こちらの部屋は、そのしゃりしゃりと梨を食べる音が広がるのみだ。

沈黙が怖くて、明子も梨に手を伸ばした。
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