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第6章 寝物語【陽炎】
「サヨ、いいもんやるからちょっとこっち来な?」

朝飯を終えた鷺がサヨを呼ぶ。

「なぁに、父ちゃん」

「ほら」

鷺は袂から猫の耳を出した。

「兎の皮でこしらえた猫の耳だ。母ちゃんに着けてもらえ。きっと似合うぞ?」

「頭に着けるの?」

「そうさ。猫娘だ。かわいいだろ?」

普段父から何かをもらうことのない娘にしてみれば、そんなものでも嬉しいらしい。

「母ちゃん、つけてつけて」

とせがむ。
苦笑しながら紐をうなじのあたりで結んでやる。
前髪を上げて赤い結い紐で結び、あごのあたりで切り揃えた髪に隠れて元々耳は見えない。
結んだ紐を髪で隠すと、本当に頭に猫の耳が生えているかのようだった。

「あら、どうかと 思ったけど、こうやってつけてみると存外可愛いもんだねぇ」

るいが笑う。

「だろ?」

鷺が勝ち誇ったように笑った。
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