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another storys
第6章 寝物語【陽炎】
家の戸を開けると、サヨは心得たもので、外の月明りを頼りに、すぐに水瓶の水で手拭いを搾って鷺に渡す。
鷺はそれで足を拭いて家に上がった。
格子戸の隙間から僅かに差し込む月明りだけが、家の中を薄く照らす。
鷺はどかりとあぐらをかき、サヨはその前に座った。
「母ちゃんの痘痕バカにされたのが辛いか。」
サヨはこくりと頷く。
「いいか、サヨ。酔客の言うことなんざイチイチ真に受けんな。あんな輩はな?よく喋る銭だと思えばいいのよ。そしたら腹も立たねぇ。そうだろ?」
サヨは再びこくりと頷いた。
「母ちゃんは別嬪だろ?」
「父ちゃん、見えないじゃない」
「見えねぇよ。父ちゃんのこの目玉はよ、生まれた時から何ひとつ映しちゃくれねぇんだ。ずぅっと真っ暗なままさ。けどな?声は聞こえる。触りゃ形も温みも判る。だから、父ちゃんは、母ちゃんがイイ女だって、ちゃんと知ってるよ。」
サヨが、鷺の手を握る。
膝の上に娘を座らせ、髪を撫でながら、
「母ちゃんは、別嬪だけど、痘瘡って怖ぇ病で痘痕が残っちまっただけだ。」
「もがさ…?」
鷺はそれで足を拭いて家に上がった。
格子戸の隙間から僅かに差し込む月明りだけが、家の中を薄く照らす。
鷺はどかりとあぐらをかき、サヨはその前に座った。
「母ちゃんの痘痕バカにされたのが辛いか。」
サヨはこくりと頷く。
「いいか、サヨ。酔客の言うことなんざイチイチ真に受けんな。あんな輩はな?よく喋る銭だと思えばいいのよ。そしたら腹も立たねぇ。そうだろ?」
サヨは再びこくりと頷いた。
「母ちゃんは別嬪だろ?」
「父ちゃん、見えないじゃない」
「見えねぇよ。父ちゃんのこの目玉はよ、生まれた時から何ひとつ映しちゃくれねぇんだ。ずぅっと真っ暗なままさ。けどな?声は聞こえる。触りゃ形も温みも判る。だから、父ちゃんは、母ちゃんがイイ女だって、ちゃんと知ってるよ。」
サヨが、鷺の手を握る。
膝の上に娘を座らせ、髪を撫でながら、
「母ちゃんは、別嬪だけど、痘瘡って怖ぇ病で痘痕が残っちまっただけだ。」
「もがさ…?」