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another storys
第6章 寝物語【陽炎】
「あぁ。痘瘡ってのは妙な病でな。いっぺん罹ると二度と罹らねぇ。けどひとり罹るとたちまち広がる流行り病だ。熱出して、下がったら何もなかったみてぇにケロっとしてる奴も、母ちゃんみたいに痘痕が残っちまう奴も、死ぬ奴もいる。母ちゃんは痘痕が残ったけど、元気で生きてる。だから父ちゃんと夫婦になれた。で、サヨが生まれた。母ちゃんは、痘瘡にやられた頃、火消の旦那がいたんだそうだ。けど、痘痕を嫌って出てっちまったんだとよ。」
「え…?」
「母ちゃんに痘痕が無かったら、旦那は出て行かなかっただろう。父ちゃんと夫婦にはなれねぇやな。母ちゃんが痘瘡で死んでたら、やっぱり夫婦にはなれねぇ。母ちゃんは、今の母ちゃんだから、父ちゃんと目会って夫婦になれたのよ。」
「そう、なの…?」
「そうさ。だから、これで良かったんだ。父ちゃんは、母ちゃんとサヨがいて幸せモンだ。」
鷺はサヨの髪をクシャクシャと撫でる。
「え…?」
「母ちゃんに痘痕が無かったら、旦那は出て行かなかっただろう。父ちゃんと夫婦にはなれねぇやな。母ちゃんが痘瘡で死んでたら、やっぱり夫婦にはなれねぇ。母ちゃんは、今の母ちゃんだから、父ちゃんと目会って夫婦になれたのよ。」
「そう、なの…?」
「そうさ。だから、これで良かったんだ。父ちゃんは、母ちゃんとサヨがいて幸せモンだ。」
鷺はサヨの髪をクシャクシャと撫でる。