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another storys
第8章 筒井筒【陽炎】
そこに入り浸っては、兵衛から薬草などの雑学を聞くうちに興味を持ち、十の時、大店の薬種問屋、但馬屋に丁稚奉公の口利をしてくれる人があって、但馬屋に入った。
下働きの仕事は多岐に渡り、その殆どが雑用と力仕事だったが、市八は生来の生真面目さからか、文句を言わずに良く働く、と主に大層気に入られた。

年に二度ある薮入りの際も、他の者より格別の心付けを貰い、励むこと八年。

手代になってからは今いる小僧を仕切り、薬の仕入や売掛の手伝いもする。

帳簿の数字が合わない時など、何時間でも倦むことなく何冊もの大福帳を捲っては数字を追いかけ、書き間違いを見つけたり、手癖の悪い奉公人が売掛金をちょろまかそうとするのを目ざとく見つけたりした。

その一本気な性分は、主にはよくやったと褒められる一方で、仲間内からは煙たがられることもあった。
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