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第8章 筒井筒【陽炎】

顔に傷痕を持つ母と、それを承知で一緒になった父、大好きな母を他人に馬鹿にされたり哀れまれたりして、悲しい気持ちになっても、当の親は言いたいものには言わせておけと気にしない。

そんなところまでそっくりで、市八とサヨは、お互いの気持ちがよくわかるから、自然と一緒にいることが多かった。

市八が奉公に入ってからは、薮入りの時にたまに会ったり、使いで町に出た時に偶然行き会ったりする程度で、長く話すこともなかった。

「お勤めはどうだい？ 楽な仕事なんてないと思うけれど、何か困ったことはないか？」

父の八尋が、穏やかな口調で尋ねる。

市八は、ふぅ、とひとつ息を吐いた。