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another storys
第8章 筒井筒【陽炎】
「大人んなりゃ変わるわよ?そのお嬢さんは、今でも我儘でお転婆なの?」
市八はふるふるとかぶりを振る。
「十五過ぎたあたりから、奉公人なんかとは顔も合わせねぇ。旦那様のしらねぇトコで下っ端と恋仲になったりしたら困るからって、新橋かどっかの寮(※)に住んでるみたい。」
(※ 寮…別荘の事)
「市八は、誰か好いた娘が居るのか?」
父の何気ない問いに市八はカッと頬を染める。
「別に話さなくてもいいよ、心に決めた娘が居るなら、別に婿にならなくてもいいんじゃないか?」
「でも…」
「但馬屋の旦那への忠心と、お嬢さんとの縁はまた別の話だよ。心に別に想う娘がいながらお嬢さんの婿になる方がよっぽど不誠実(あだ)というものだ。お前から聞く話の限りでは、但馬屋の旦那様は話のわかる方のようだし、素直に理由を話してお断りすれば、臍を曲げるようなお方じゃないのだろう?」
市八はふるふるとかぶりを振る。
「十五過ぎたあたりから、奉公人なんかとは顔も合わせねぇ。旦那様のしらねぇトコで下っ端と恋仲になったりしたら困るからって、新橋かどっかの寮(※)に住んでるみたい。」
(※ 寮…別荘の事)
「市八は、誰か好いた娘が居るのか?」
父の何気ない問いに市八はカッと頬を染める。
「別に話さなくてもいいよ、心に決めた娘が居るなら、別に婿にならなくてもいいんじゃないか?」
「でも…」
「但馬屋の旦那への忠心と、お嬢さんとの縁はまた別の話だよ。心に別に想う娘がいながらお嬢さんの婿になる方がよっぽど不誠実(あだ)というものだ。お前から聞く話の限りでは、但馬屋の旦那様は話のわかる方のようだし、素直に理由を話してお断りすれば、臍を曲げるようなお方じゃないのだろう?」