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another storys
第8章 筒井筒【陽炎】
「うん….」

「お前が支店の若旦那になろうがなるまいが、私たちの息子である事に変わりはない。帰ってくる家もあるのだし、但馬屋との縁がそれで無くなるなら、またどこか別の働き口を探せばいいだけの話だよ。」

「うん」

市八は顔をあげて笑った。

「ちょっと、出掛ける。」

「せっかくの休みだ。好きに過ごしておいで。」

「父ちゃん、母ちゃん、なんか欲しいモンある?給金出たし、買ってやるよ?」

市八の言葉にふたりは同時に首を横に振る。

「私たちは何も要らないよ。お前の元気な顔が見られるだけで十分だ。自分の好きに使うか、使う道がないなら貯めておきなさい。」

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