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another storys
第8章 筒井筒【陽炎】
「旦那様、おはようございます。昨日はどうも、ありがとうございました。両親ともに息災でございました。」
座敷に座って手をつき、薮入りの礼をする。
「それはなによりだ。ところで、あの話は相談してくれたか?」
「はい。その件ですが、やはり私には身に余るお話ということで…」
「私は、お前の働きを買っているのだ。身の丈に合わぬとは思っていないよ。」
「ありがとうございます。ですが、私には、心に決めた筒井筒の娘が居ります。」
「筒井筒…それは、双方の親御さんとも確と決まった話なのかい?」
「いえ。約束を交わした訳ではございません。私一人の心の内です。ですから、私が一人前になる前に、どこかへ嫁いでしまうかもしれません。もし、そうだとしても、やはりこの気持ちを持ったままお嬢様に縁付くような、不実な事は致しかねます。」
市八は手をつき深く頭を下げた。
その言葉に主が目を見開き、思わず笑う。
座敷に座って手をつき、薮入りの礼をする。
「それはなによりだ。ところで、あの話は相談してくれたか?」
「はい。その件ですが、やはり私には身に余るお話ということで…」
「私は、お前の働きを買っているのだ。身の丈に合わぬとは思っていないよ。」
「ありがとうございます。ですが、私には、心に決めた筒井筒の娘が居ります。」
「筒井筒…それは、双方の親御さんとも確と決まった話なのかい?」
「いえ。約束を交わした訳ではございません。私一人の心の内です。ですから、私が一人前になる前に、どこかへ嫁いでしまうかもしれません。もし、そうだとしても、やはりこの気持ちを持ったままお嬢様に縁付くような、不実な事は致しかねます。」
市八は手をつき深く頭を下げた。
その言葉に主が目を見開き、思わず笑う。