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another storys
第11章 約束【陽炎】
「昨日出掛けてたのは知ってるけど、どこ行ったかまでは聞いてないけどねぇ…湯島なら天神さんの梅でも観に行ったのかしら」

ころころと笑ったるいにお内儀は眉をひそめ、

「何呑気なこと言ってんだよこのヒトは!湯島のあたりで男と二人なんて出会いしかないじゃないか!」

出会いとは、出会い茶屋(※)のことだ。
幾ら恋仲とはいえ、市八はまだひとり立ちできる身分ではない。すぐに嫁に取ってもらえるわけではないのにそれは確かに、行き過ぎだとも思う。

「真っ昼間っから人の目だってあるんだからさ、悪いこと言わないよ、さっさと嫁に出したほうがいいよ?あたしの知り合いにいい年頃の息子がいる人もいるからさ…」

お内儀の話は幾分割り引くにしても、人に見られるような明るい時間にそんなところにしけ込むは確かに感心しない。鷺が聞いたら怒り狂うだろう。

[※….今で言うラブホテル]
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