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第14章 蝶の見る夢【陽炎】
夕刻になり、常磐の部屋も騒がしくなる。
髪を結い、着物を着て、引手茶屋まで禿と新造を引き連れて歩く。
所謂、花魁道中だ。
夜見世が始まる頃でもあり、通りはまだ明るいが、徐々に赤い提灯に火が灯り、吉原が夜の装いになる。
裾を掻い取り、下駄を外に蹴り出して八文字を描き、ゆっくりと歩く。
格子の中で客の手を引く女郎も、その女郎を買いに来た男達も、この時だけは動きを止め、常磐の歩みに、ただ見入る。
皆の視線を一点に集め、常磐は茶屋までの、そう遠くない道程を、ゆっくりと進んだ。
茶屋につき、座敷に上がるともう幇間や芸者衆が揃って騒がしい。
その中で、己の為に設えられた上座の膳にゆったりと座った。
下座の座敷で、膳の料理を食い、膝を叩いて楽しげに拍子を取る男。
常磐が席に着くや、ふっと上座の方を向き、
「あンたが、花魁かい?」
とニッと笑う。
とても、美しい顔立ちの男だった。
髪を結い、着物を着て、引手茶屋まで禿と新造を引き連れて歩く。
所謂、花魁道中だ。
夜見世が始まる頃でもあり、通りはまだ明るいが、徐々に赤い提灯に火が灯り、吉原が夜の装いになる。
裾を掻い取り、下駄を外に蹴り出して八文字を描き、ゆっくりと歩く。
格子の中で客の手を引く女郎も、その女郎を買いに来た男達も、この時だけは動きを止め、常磐の歩みに、ただ見入る。
皆の視線を一点に集め、常磐は茶屋までの、そう遠くない道程を、ゆっくりと進んだ。
茶屋につき、座敷に上がるともう幇間や芸者衆が揃って騒がしい。
その中で、己の為に設えられた上座の膳にゆったりと座った。
下座の座敷で、膳の料理を食い、膝を叩いて楽しげに拍子を取る男。
常磐が席に着くや、ふっと上座の方を向き、
「あンたが、花魁かい?」
とニッと笑う。
とても、美しい顔立ちの男だった。